昔々図書館で借りてはみた(*1)もののどうにも付いて行けず、ランダムと合流するくらいかジュリアンと戦うあたりで投げ出してしまった記憶がある。それが今回はたまたま国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能になっていることに気付いたことを機に再読してみたものである。
いちおう最後まで読める程度には我慢できたが、やはりあまり面白くない。その病理を今にして言語化するならば次の四点に帰着する。
第一に主人公を始めとした登場人物に魅力がなく、感情移入が困難。ハードボイルド風味(訳者あとがきにいわく、キース・ローマー風)であることも失敗で、登場人物の内心がさらに分かりづらくなっているように思える。
第二に、プロットやストーリーがつまらない。ただの行き当たりばったりで、プロがまともに練ったものではないように思える。
第三に、空想小説として魅力がない。多元宇宙の設定や魔法の設定に魅力・必然性・整合性・深みが欠けている。
第四に、諸々の要素がバラバラでありシナジー効果が得られていない。例えば主人公らアンバー王族の超人的身体能力がキャラクターの魅力を引き出すことも無ければストーリーやプロットに有機的に活かされることもなく、何の意味もない。
どうして本作が激賞されていたのか理解しがたい。
*1 実はゼラズニイはさほど好きではなく、本来ならたぶん手に取ることはなかった。それがたまたまSFマガジンのバックナンバーの『SFスキャナー』(だったと思う。たぶん)で激賞されているのに刺激され、読んでみるに至った。