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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ライマン・フランク・ボーム『オズの消えた姫』感想

初めて読む。たまたま事情があって復刊ドットコム版の方を選択。早川書房版の『オズの消えたプリンセス』に相当。邦題が違うが、復刊ドットコム版は邦題についても「完訳」を旨としているようだ。

まあまあ面白かった。これまで作品世界をダメにし続けてきた二大チート要素である
・『魔法の絵』
・『魔法の本』
が謎の消失を遂げ、ドロシーら凡夫たちが問題の解決に立ち上がるというコンセプトが斬新であり優れている。…ボームもこれらの要素が反則的であることは自覚していたようだ。

悪役の「靴屋ウグ」も従来の悪役――例えばノーム王――とは違って全く可愛げが無く、邪悪で酷薄と言おうか昆虫のように人間性が感じられないところに新規性がある。

追記 「オズマ姫は人間ではなく妖精」「妖精は不死身であるが人間は不死身ではない」という新たな設定が本巻でいささか突然に(?)現れた。これまで作品世界をダメににしていた最悪の設定にようやく対処する気になったのは良いが、あまりにもやり方が雑ではあるまいか。

追記2 復刊ドットコム版について。志のあるプロジェクトであり、まずは称賛したい。翻訳は(自分が佐藤高子の訳文があまり好きでないという事情もあるが)概して早川書房版よりも読みやすく、納得が行く。ただし登場人物名など固有名詞の訳語に関してだけはセンスが悪いように感じる。あと早川書房版では巻頭にある絵地図(おそらくオリジナルのもの)が無いのは、「完訳」という趣旨からすると正解なのだろうが実用上はディスアドバンテージであろう。
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