蔵書より、久しぶり再読……と言おうか(
『地球最後の砦』と同様に)読み進めるうちに気付いたのだが、覚えのある文章が序盤にしか見られなかったことから、どうやらかつての自分は本書もまともに通読はしていなかったようである。ハヤカワ文庫SF初期のタイトル、しかもヴァン・ヴォクトを前世紀からただただ本棚の肥やしにしていたことを深く反省するものである。
しかし、あまり面白くない。登場人物に魅力が無いし、プロットは支離滅裂で、テーマが読み取れず、アイディアにも光るものがない。
あえて言えば安価で高性能な飛行機械の発達により人類がフローター(プレニアック、自然愛好者)とトゥイーナー(都市生活者)と影(シャドウズ)の三派に分裂するという未来図は面白いと言えなくもない(ちょっと『都市』を思わせる)し、その三派の争いが物語の縦軸にするのも悪くはないのだが、どうもパッとしない。せっかくの着想がどうも不完全燃焼に思える。
訳者(矢野徹)の後書きも、営業上直接的な非難はしていないが言外に本作やダイアネティクス以降のヴァン・ヴォクト作品のつまらなさを嘆いているようだ。
そして『地球最後の砦』と同様、本書も最大の見どころは岩淵慶造のイラストレーションかもしれない。本書もカバー画は見事なもので、初期のハヤカワ文庫SFを代表するSFアートの名作と言えよう。ターバンの美女が実にハイセンスだ。