実を言うと――練達のSF読者を常日頃自称しておきながらあるまじきことなのだが――本書をまともに読むのは初めてである。いや、当然本作の存在はSF歴のごく初期から認識しており、中学生くらいの頃には図書館からの放出本で本書そのものを入手するに至っていた。しかし本作の内容は当時の私にとっては高尚過ぎ、流し読みをするのがやっとであった。さらに悪いことには、本作に対する苦手意識ばかりが強く心に刻み付けられてしまったためか、復習をする気も起きないまま最近に至っていた。
それが今回は訳あって蔵書を整理していたら本書を再発見し、急に読みたくなって再読してみたものである。
良い小説だった。
年齢を重ねた現状でも全てが理解できたとは言い難いが――私の知性が結局そのレベルに到達していないという問題に加え、おそらくキリスト教にある程度通じていないと本作の完全な理解には至らないのではなかろうか――本作が良い小説であり、物語の究極のテーマである真・善・美を扱った野心的なSFであることは理解できた。
パングボーンは日本においてもっと注目されても良かったのではないか。早川と創元が争うように本作を出版したきりで、後は短編が散発的に紹介されただけでパングボーンという作家の全貌は全く分からないまま忘れ去られてしまった感がある。嘆かわしい。