『マルペルチュイ~ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集』の刊行を機に、久々に再読。学生時代に1・2回流し読みしていたかもしれないのを除けば、精読したのは少年時代ぶりだろうか。
いやあ、記憶していたよりも格段に面白い。ミステリ、アクション、SF、怪奇、文学性が完璧な配合率で盛り込まれており相乗効果を上げている。そして、まごうことなき傑作の風格。ベテランエンターテイニーである私の固く守られた急所も易々とど真ん中を貫かれてしまった。少年時代には「まあまあの水準作だが、地味だしSF度が足りない」くらいの印象を抱いていた記憶があるが、当時の私は本作を楽しむには全くもって役不足(誤用)だったと言えよう。
何かの書籍で「かつて”科学探偵もの”というジャンルがごく一時的に隆盛を誇った。それらの作品群はすぐに陳腐化し、今日では一つ残らず忘れ去られているし実際忘れ去られても仕方ない」のような論述を読んだことがある。これまで、私はこの説に完全に同意していた。しかし今は違う。少なくとも《名探偵ハリー・ディクソン》シリーズは例外である。本シリーズは全く陳腐化しておらず、むしろ古典としての価値を高めているように思う。
巻末の訳者解説やインターネット上の情報によれば、本シリーズは百数十編という莫大な数があるらしい。読みた過ぎる。誰か翻訳してください……本当にお願いします……
各巻各話(※岩波少年文庫から邦訳されたこのシリーズは、いずれも百数十ページの中編2話が1冊を構成している。)の書誌情報は次のとおり。内容紹介および感想については次エントリ以降で。
1.怪盗クモ団 榊原晃三訳 岩淵慶三画 岩波少年文庫3121 1986年
怪盗クモ団
謎の緑色光線
2.地下の怪寺院 榊原晃三訳 岩淵慶三画 岩波少年文庫3122 1987年
七狂人の謎
地下の怪寺院
3.悪魔のベッド 榊原晃三訳 岩淵慶三画 岩波少年文庫3123 1987年
悪魔のベッド
銀仮面
追記。当時は意識していなかったのだが、イラストが岩淵慶三だというのも良い。そういう所も含めて本当に文句なしである――6編3巻で中断(完了?)してしまったことを除けば。