副題:誰も知らない、もう一つのオズの物語
原題:WICKED: The Life and Times of the Wicked Witch of the West
着想はとても良い。『オズ』シリーズを大人向けに再解釈し、時系列的には『オズの魔法使い』の数十年前から本編までをカバーし、「西の悪い魔女」を主人公にして物語を進めるというコンセプトはまさに私の待ち望んでいたものである。最近『オズ』シリーズのブームが私の中で再燃しているためインターネットで色々と調べている内に本作の存在を知り、飛びついて読んでみた。
しかし残念ながらさほど面白くなかった。細部にも良い点は多いし、随所で匂わされる「再解釈版オズ世界」の設定も極めて興味深くワンダーを感じるのだが、どうしても作中世界に入り込めない。原因は言語化し難いのだが、意識できている限りでは例えば主人公エルファバに魅力が無いことは大きい。同調できないにしても――同調できるかは人それぞれであり主観的なものである――「深み」や「実在感」――これは読者個々人にあまり依存しない客観的なものである――が感じられないのが痛い。
あと、邦訳の副題が全く筋違いなのも白ける。営業上の判断なのだろうが作品の本質を無視しており、愚かだ。
…『オズ』シリーズの大人向け再解釈と言えばキース・ローマーの兄弟のマーチ・ローマーという人物がそれを得意としていたとどこかで読んだ記憶を思い出した。すごく読みたくなって来た。誰か翻訳してください。