早川書房版。『オズ』復習13冊目。読んだことがあるかないか確証がなかったが、読み進めるうちに覚えのある箇所がちょこちょこ見つかった(「ウージイの吼え声」のところや「ねじくれ魔術師が健康体に戻る」ところなど)ので、一度は読んでいたようだ。しかし全体的な筋書きについては全く記憶を刺激されることがなかったので、おそらく流し読みしかしていなかったと思われる。今回は一気に精読した。
で、感想としてはまあまあだった。シリーズの大半の作品と違って「大過がない」のが取り柄である。主人公のオジョ少年には好感が持てるし、その行動原理は筋が通っており支持できる。その仲間たち――つぎはぎ娘、ガラスの猫、生ける蓄音機、四角い生物ウージイ、モジャボロ――もまあまあ悪くない。彼らの探索行もまあまあ大過が無い。ただし(例によって)オズマ、グリンダ、大魔法使いオズによって問題が解決される結末には頷きかねる。これまでの主人公たちの努力は何だったのか?
あと、児童書にあまり本気で言うものではないが――いや、児童書だからこそ気にするべきだろうか?――オズマ姫の専横・独善ぶりには疑問を抱かざるを得ない。魔法禁止令の意図は分からないでもないが、オズの国には魔法がないと生活や生計が立ち行かない人だっていくらでも居ただろうに、いきなり全てを禁止するのは乱暴で性急過ぎないか? また、自分とグリンダと大魔法使いオズだけは例外にするのはあまりにもエゴイスティックではあるまいか。そして「魔法の絵」と「魔法の本」。おとぎ話だから許されている感があるが、冷静に考えると「領内の人類の全ての行動を完全に監視している為政者」は今日の文明国人の感覚からすると許容し難い。