Amazonでサジェストされて来て、ピンと来るものがあったので読んでみた。
結論から言うとかなり良かった。金額だけの価値はある。
まず作品自体について。良質のサイエンティフィック・ロマンスであり、楽しく読めた。特に『アアリラ』はファースト・コンタクト・テーマSFとして先駆的で、5年後、10年後のSF専門誌に掲載された作品と比べても遜色ないだろう。
そして翻訳もきわめて真っ当(何様目線での評価なのかと言われそうだが、金を出しているのでお客様目線なのである)。以前、Kindle自費出版物を一まとめにしてクソミソに否定したが、私が間違っていた。ふつうの商業出版物の訳文の水準と比して、何ら劣るところがない。かなりできる人(人たち?)がやっているようだ。
この人(人たち?)は選定眼も大したものだ。私もいちおう一人前のSFマニアのつもりだが、クリストファー・ブレア(Christopher Blayre)ことエドワード・ヘロン・アレン(Edward Heron Allen)とその作品については、この本で初めて知った。こういう志のある発掘活動は大好きだ。今後も頑張って欲しい。
一つだけ難点を挙げると、サンプルがサンプルの体を成していないのは商品として致命的だと思う。一文字も本文が読めない謎仕様はミスなのか、それともまさかサンプルの意味を理解していないのか…?