総評としては、”良い”。やはり60年代・70年代のSFマガジンには、単行本に載らないまま(または銀背のマイナーなアンソロジーあたりに載った程度で)忘れられてしまった秀作が腐るほどあることを思い知った。
『ボロゴーヴはミムジイ』ルイス・パジェット
ルイス・パジェットというかヘンリー・カットナーはかなり好きな作家なのだが、この作品は全く好きになれない。銀背のカットナーの個人短編集でも表題作になっていたが、どこが評価されているのかどうもよく分からない。これを機に再読したがやはり分からない。カットナーなら他にいくらでも良作があると思うのだが。
『子どもの部屋』レイモンド・F・ジョーンズ
レイモンド・F・ジョーンズは本書に収録された作家の中では今となっては最も忘れられた作家と言えるだろう。実際、私もジョーンズは好きなのだがこれと言った代表作を挙げろと迫られたら回答に困ってしまう(敢えて言えば『よろず修理します』かな? しかし代表作と呼ぶにはやはりあまりぱっとしない…)。しかし、この『子どもの部屋』は良い。SFの最たるテーマの一つである超人テーマの、大人しいながら味わいのある佳品と言えるだろう。
『虚影の街』フレデリック・ポール
「自分の周りの世界全体がまがい物だった」系。悪くない。ポール単独の短編ももっと陽の目を見ても良いのだが……
『ハッピー・エンド』ヘンリー・カットナー
これもカットナーの中では例外的に好きでない作品の一つ。どうも編者とは趣味が合わないな……
『若くならない男』フリッツ・ライバー
うーん、ライバーならもっと良いSFがいくらでもあると思うのだが……。文学的には優れているのだろうか。まあ、読んだ事がなく、本書が無ければ一生読むことのなかったであろう作品が読めたのは良かった。
『旅人の憩い』デイヴィッド・I・マッスン
秀作。”ワンダー”がある。全く聞いたことがない作家だが、ISFDBによると60年代~70年代に10編ほどの短編を発表しただけの寡作家のようだ。銀背の『ニュー・ワールズ傑作選 No.1』にもう一つだけ短編が載っているらしいので、そのうち読んでみよう。
『思考の谺』ジョン・ブラナー
ジョン・ブラナーはけっこう好きな作家で、もっともっと翻訳してほしいところなのだがこの短編は特に魅力を感じない。