急に読みたくなって再読してみた(文庫版)。考えてみると、学生時代に2・3回読んだきり長らく読んでいなかった。
あまり良く覚えていなかったこともあり、新鮮な気持ちで読めた。悪くはない。他の作品でしばしば垣間見える
・寓話風な傾向
・狭義のSFから離れる傾向
が最前面に出て来た、シェクリイ作品の一つの極致と言えるだろう。個人的な好みからは若干はずれるが、これはこれで意義深い作品だ。
ただし、(知性や教養が足りないせいで機微が理解できていないだけかもしれないが)そのコンセプト内で完成度が高いかと問われれば、私は否と答えたい。前半から中盤の力の入りようは素晴らしく(特に三人のトラック運転手の物語やジョーンズが大学で講義を持つエピソードは傑作だ)、シェクリイが大いにエンジョイして執筆していたであろうことが察せられる。しかし後半は、うまく終結はしているので致命傷には至っていないものの、どうにも生気を欠くエピソードが多いように感じる。
『ロボット文明』もそうだが、コンセプトは良いのだからもう少し集中して慎重に時間を掛けて書き上げて欲しかった。憶測だが、シェクリイはたぶん集中力が長期間続かないタイプの人なのだろう。長編には向かない(『不死販売株式会社』が一分の隙もないのは驚くべき偶然の賜物か、あるいは若さの賜物か。いずれにせよ神に感謝したい)。そういう意味で、本書は悪くはないが、もっと良くなる潜在力がある惜しい作品だ。
追記:和田誠のカバー画はオシャレで良いな。作品の雰囲気にも合っている。