書名:大地への下降
作者:ロバート・シルヴァーバーグ
訳者:中村保男
レーベル:サンリオSF文庫
出版年:1978年
サンリオSFなので
①難解な割に内容が無い駄作ではないかという懸念
②難解ながらも鮮烈な問題作ではないかという期待
を両方持ちながら読んだのだが、どちらの予測も外れた。難解ではなかったのである。
テーマは
・一人の頑なだった男の回心
・地球(西欧のメタファー)中心主義への反省
・異星(非西欧のメタファー)の精神主義への接近
という理解で良いのだろうか。ひょっとして、私の読み方はあまりに安直で、表層しか読み取れていないのだろうか? まあいいや。理解できているという前提で行こう。
小説としてもサイエンス・フィクションとしても水準以上ではある。雰囲気も悪くない。ただし敢えて言わせていただけるなら、もう少しSF的ディティールを充実すれば物語にもテーマにも説得力が増したのになあと惜しく思った。
四足獣型の不器用な異星人という題材はオールディスの『暗い光年』を思い出させる。そう言えばテーマ的にも作品のニッチ(多作なビッグ・ネームの地味な作品に属する)的にもよく似ている。毎回毎回傑作大作問題作では疲れてしまうのでこれくらいの作品のニーズは大いにあるのだが、あまり積極的に邦訳されていない(もしくは邦訳されても少ない部数のまま絶版になり後から入手する難易度が高い)のが残念だ。せめて図書館なりの公的機関が網羅的に所蔵してくれれば良いのだが……