Wonder Stories 1931 Feb.
https://www.gutenberg.org/ebooks/79450
PGのトップページの新着作品でたまたま見つけて、興味を惹かれたので読んでみた。
なかなか見どころがあった。
序盤は紋切り型の「戦前の月世界もの」の一つに過ぎないが、原理が未知のまま作られた反重力機関が時間遡行を引き起こすあたりから独自色を帯び始め、主人公は大昔の月――月がまだ大気と水を保っており、生命が存在する。逆に地球はまだ隠生代である模様。――に到着することになる。
到着後の序盤の流れは紋切り型ではあるが、「気球生物」――プロット上で主人公を宇宙船から引き離す役割を果たす――という着想はかなり先見的ではあるまいか。そして主人公は「月人の最後の『母』」と「永遠なる者たち」の闘争に巻き込まれるわけだが、
・「母」は好人物ではあるが紛うことなき異生物であり、バローズ的ヒロインではないこと。
・「母」の種族と「永遠なる者たち」は元は同一種族だったが、機械文明に頼ることの愚を悟った前者は機械文明を捨てて「知恵」と生物学的繁栄を獲得、いっぽう後者はさらに機械文明を発達させるが生物としては衰退して完全機械式サイボーグになり果てる。そのため後者は繁殖のために前者を捕獲しようとするが後者は当然抵抗し、妥協なき闘争が続きその時点では両者がほぼ全滅している。
という設定がなかなか秀逸で独自性がある。
惜しむらくは、物語の結末が凡愚であることだ。あまりにも唐突に終わってしまうし、最低限のひねりもない。この時期のウィリアムスンはSF的着想と小説技法が釣り合っていなかったのであろうことが伺える。