本書の存在は知っていたが、SF映画というものにさほど興味がない――なぜならば、SF映画とは「SFについて何の知識も愛情も持っていないクソども」が、「目先の端金のため」に、「SF小説読者よりは三段階くらい低い知性の視聴者」のために作るものであり、SF小説は90%がクズかもしれないがSF映画は99%がクズだと推定されるからである――のと、収録作品にもそれほど興味が湧かなかったためしばらく放置していた。今回はたまたまシオドア・スタージョンの短編が読みたくなり、『殺人ブルドーザー』が収録されていることから読んでみたものである。
ブラッドベリ『趣味の問題』:秀逸であり、問題提起的な一作である。ブラッドベリにはこういう一面もあったのか。題名とポスターから察するに映画版はたぶん一山いくらのクズ映画なのだろうが。
ウォード・ムーア『ロト』:これは福島正実のアンソロジーですでに読んでいるので流し読みで済ませた。なお、映画版は邦題『性本能と原爆戦』が最悪の一言に尽きるが、原題は『Panic in Year Zero!』らしく、まだ許せる。いずれにしても観る気にはならないが。
スタージョン『殺人ブルドーザー』:これが目的だったにも関わらず、凡庸で冗長で読み通せなかった。またそのうち読もう。
ウォルハイム『擬態』:予想外に秀逸だった。作家としてのウォルハイムの最高傑作の一つかもしれない。真相が解明された後も、例えば「変人」は毎日どこへ行っていたのか? 「変人」はどこから金を得ていたのか? そしてこの世界には一体どれだけの擬態生物がいるのか? …と、疑問が尽きないところが恐怖SFとして優れたところであろう。
ハリイ・ベイツ『主人への告別』:これもどこか別のアンソロジーですでに読んでいるので流し読みで済ませた。悪い作品ではないが、内容の割に長過ぎるのが難点か。なお、さすがにこれだけは映画版も観ているのだが、あれがSF映画の古典的名作の一つと呼ばれるのは(同時代の他のSF映画がクズ揃いだとしても)過大評価のように思える。
ハインライン『月世界征服』:これについては存在を忘れていた。熱狂的ハインライニストとしては本作のために本書を刊行後ただちに読むべきだった。深く反省する。内容的には(やや薄いしやや色合いが違うながらも)「ハインラインのSF」であった。『宇宙船ガリレオ号』とは結局全然別物になっているが、これはこれで悪い作品ではなく、これ独自の価値を有する。『「月世界征服」撮影始末記』によると映画版も(その予算や技術の範囲内では)SF的に誠実に作られたという話なので、そのうち観てみたい。