ロードマップ
- 第一巻『銀球にて(仮)』On the Silver Globe
- 序章「月から来た手稿(仮)」A MANUSCRIPT FROM THE MOON...
- 第一部「旅行日誌(仮)」TRAVEL DIALY
- 第二部「月の裏面にて(仮)」ON THE OTHER SIDE .
- 第三部「新世代の中で(仮)」AMONG THE NEW GENEREATION
- 第二巻『征服者(仮)』The Conqueror
- 第三巻『古き地球(仮)』The Old Earth
【梗概】
主人公は寿命が近づくのを感じ、ホームシックを募らせ、地球を眺めるために数十年ぶりに北極を訪れる――いまだに月面車は使用可能だったのである。そして同行者たちと会話をしているうちに、主人公は一つの重要なことを思い出す。それは不時着地点に放置してしまった「大砲」の存在である。
折しも冒険的な「子供たち」が「海」の南岸に到達し、敵対的な現住知的生物と遭遇。彼らは「ご老人」の加護と指導を欲していた。しかし主人公は自分の寿命の残りを目先の利よりも地球との通信再開に投じることを決断し、一人月面車でニアサイドへ旅立つ。空気、食料、寿命すべてが尽きる間際で主人公ヤン・コレツキーは不時着地点に再び到達し、大砲で手記を地球に撃ち出すのだった。
【感想】
終盤が若干駆け足と言えなくもないが、とにかく傑作である。根拠は傑作のアトモスフィアが濃厚に漏出していることである。もう少し理屈をこねるならば、「人間はいかに生きるべきか?」「普通小説の範囲内ではありえない極限状況において人間はどうなるか?また、どうあるべきか?」というSFの最も根源的なテーマが真っ向から扱われていることを高く評価せざるを得ない。
そして小説/文学としての秀逸さ。本作の基本は当然悲劇である――科学探検隊としての失敗、第一・第二世代の人間関係崩壊、第二世代以降の退化、そして極めつけは主人公の嘆息「我々は地球から『悪』も持ってきてしまった」――が、ただ単調に悲劇一辺倒なわけではなく、わずかながらも希望が見える――第三世代以降で再興する冒険心、そしてヤンがマーサからは終生得られなかった愛を最終的にマーサの末子エイダから得られたと言えなくもない)ところが高く評価できる。
月テーマSFの、宇宙SFの、サバイバルSFの、そして20世紀初頭SFの金字塔と言って間違いなかろう。次巻が楽しみだ。
本作が日本にまともに紹介されていない現状は全くもって嘆かわしい。レムを何十冊も翻訳刊行するリソースがあるなら本シリーズを3冊訳せば良いのに。とにかく心あるSF読者は騙されたと思って英語版(Kindle/楽天Kobo)なりドイツ語版(Project Gutenberg)なりを読むことをお勧めしたい。