同じ著者の『戦車対戦車』を以前から愛読していたところ、最近ようやく本書の存在を知ったため読んでみた。
良書…いや名著である。『戦車対戦車』と同様、著書は研究対象の性能を種々のカタログ値により指数化して比較して論じている。その議論は合理的で明快であり、工学者の本領が発揮されている。私は(*1)このような書籍を他に知らない。世の中にはこの著者より戦闘機に関して表面上の知識が豊富な「専門家」はいくらでも居るだろうが、彼らの著作物は木を見て森を見ずと言おうか群盲象を撫でると言おうか、どうしても事の本質に迫っていないように思える。
本書では次のような指数が提唱されている。
・馬力荷重=自重/馬力
・翼面荷重
・翼面馬力=翼面積/馬力 ※速度に直結するとのこと。
・旋回性能指数∝(翼面荷重・馬力荷重)^(-1)
・防御性能指数∝(翼幅・翼面積)^(-1/2)
・総合性能指数∝速度指数・旋回性能指数・防御性能指数
・設計効果指数∝総合性能指数/馬力
・生産効果指数∝総合性能指数/自重
正直、馬力荷重と翼面荷重以外についてはこれまで考えたこともなかった。あらゆるケースに適用しうる完璧な指標とは限らないかもしれないが(*2)、実に示唆に富む。
*1 私はこの道のマニアとしてはごく初等的なものに過ぎないため私が無知なだけかもしれないが。
*2 例えば防御性能指数はなぜ翼幅と翼面積の積の-1/2乗なのか。例えば-0.4乗や-0.6乗ではダメなのか。そして総合性能指数はなぜ三つの指数を平等に乗じているのか? これらは物理学的で理論的な裏付けがあるのか、それとも工学的で経験的・アドホック的なものなのだろうか。