【書誌情報】
題名:未踏の時代
副題:日本SFを築いた男の回想録
著者:福島正実
出版者:早川書房
出版年:1977年(単行本版)/2009年(JA版)/2017年(Kindle版)
ASIN: B076M8GZVB(Kindle版)
【解説】
巻末の「解説」(高橋良平)によると、SFマガジン1975年7月号から7回に分けて「未踏の時代――回想のSFマガジン」として連載されたもの。福島正実死亡のため未完。
【感想】
何十年SF者をやっているのかと問い詰められたら何の反駁もできないが、実は福島正実に『未踏の時代』という著作が存在することは知っていたが、それが回想録――しかもSFマガジン黎明期を中心とした回想録――であるということをこれまで知らず、一度も読まずに来た。昨日たまたまそれを知って、Kindle化もされていたので飛びついて読んだ。
一挙に読み通してしまった。これは必読の一冊だ。これまでの自分を小一時間問い詰めたい。
まず日本におけるSF出版史について、その中心であった男の回想録であるから、ファクトを知るための資料として秀逸である。特に、その時代をリアルタイムで経験したわけではない世代のSFファンにとっては極めて貴重な情報源だと思う。ファクトを列挙するのが必ずしも主旨ではない本書を通読しただけで、いくつかの長年の疑問が解消を見た。また高橋良平の「解説」も、未完な本文を補う意図で書かれており資料的価値が高い。
そして、「SFの鬼」が何を考え、何を感じ、何をして来たのか――その予想をはるかに上回る真摯さ、熱意、超人ぶりには深く心を打たれた。必ずしも全てを肯定するわけではないが、何と偉大な人物だろう!
(追記)福島正実の写真を本書で初めて見た。これまでの勝手なイメージで黒縁メガネのスクエアな男を想像していたら、細面の涼しげな人物で驚いた。