忍者ブログ

プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ブライアン・キャリスン『無頼船長トラップ』感想

若いころはドハマりして年に2・3回は復習していたのだがいつの間にかそのルーチンが途切れていたところ、久しぶりに再読してみた。

抜群に愉快で独自性がある。そこは記憶どおりであった。しかし、以前は気にならなかったのだがユーモラスな部分とそれ以外の部分に今ひとつポン付け感を覚えてしまった。「完全無欠の傑作」とまで思っていたのは少々過大評価だったかもしれない。

あと、重箱の隅をつつくようであるが翻訳に違和感のあった点を一つ指摘させてもらいたい。249ページの「マルクII」であるが、II号戦車のことだとしたらそんな奇妙な訳語は見たことがない(もし一般的にありうる訳語だったらごめんなさい)。私はそこまで軍事・戦史に詳しいわけではないし、本書の原文は読んでいないし、これはドイツ人とイギリス人の(おそらくドイツ語・英語を織り交ぜた)会話中に出てきた言葉なので奇妙な原語をあえて奇妙な語感のまま訳したと言われてしまえばそれまでだが、私が邪推するにやはりこれは次のような流れで生じた誤訳ではなかろうか。
・意味としては「II号戦車」。
・ドイツ人と英国人の会話と言うこともあり、おそらく原文はII号戦車を英国風に表現して「Mark II」という一般的にはない語になっている。
・訳者はII号戦車の存在を知らず、これをドイツ語の固有名詞と誤解してドイツ語風にそのまま読んで「マルクII」としてしまった。

傍証として、この前後を読むに「タンク」という語が3回、「戦車」という語が1回出てくるのだが、その出て来かたがどうも奇妙で、訳者が「タンク」と「戦車」が同義語だと理解していない節が感じられる。つまり訳者は海事はともかく陸上兵器については極めて疎いことが疑われるのである。
PR

コメント

プロフィール

HN:
匿名(仮称:プロジェクト・サイラス・スミス管理人)
性別:
非公開

P R