久しぶりに再読。
やはり傑作だ。SFプロパー作家がSFマーケット向けに書いたSFとは別ジャンルの芸術として、極めて高い水準に到達している。
高校時代の私がドはまりしていたのもむべなるかな(*1)。今にして言語化するならば、……いや、今にしても然るべく言語化するのは困難なのだが本作の美点の一端だけでも何とか列挙してみよう。
・独特の突飛なユーモア感覚。これは言うまでもなかろう。
・支離滅裂なユーモアの衣の中で、実はプロットという骨格もしっかりしていること。アーサーとフォード、ザフォドとトリリアン、地球とマグラシア、そしてネズミという一見何の脈絡もない事象が最終的に無理なく「究極の質問」へとつながってくる構造は、綿密な計算あってのことであろう。
・「人生、宇宙、全ての答え」という、言わばSFにおける究極のテーマに果敢に挑んでいるのがあっぱれである。そして「究極の答えを得るためには、究極の質問を発する必要がある」という(副次的な?)考察は――ロバート・シェクリイの短編『愚問』でも同じテーマが扱われていたが――シェクリイに負けず劣らず見事に料理されている。
*1 今にして思うと本書に出会ったのが高校初期だったのもすばらしい幸運だった。もう少し早ければ本書の晦渋さに理解が及ばないまま悪印象を抱いてしまっていただろうし、もう少し遅ければ本書を受容するピュアな精神を失っていただろう。