5年ぶりか10年ぶりか、けっこう久しぶりに再読。
前回までの私はなぜか本書を単なるアクションSF(*1)だと捉えており、そのためなぜ本書が青背に分類されているのか理解に苦しんでいた。しかし今回でようやくテーマーー少数の邪悪な人間がエネルギー供給を独占したら社会はどうなるか? そしてその体制をいかに打破するか? 打破した後はどのような社会を築くべきか?ーーが理解できた。確かにこれは青背クラスの本格SFである。
というわけで、本書に対する評価は確実に一段階上がった。しかしこれまで無かったほど本書をしっかり熟読した結果、新たな不満が生じてきた。
1.終盤、どん底からの一転攻勢があまりにもご都合主義と言おうかデウス・エクス・マキナそのものであること。もう少し工夫が欲しかった。
2.主人公の内面描写があまりにも少なく、行動原理が分からず、感情移入しづらいこと。ローマーの娯楽SFではそういうスタイルが功を奏している作品もあるが、本書では失敗しているように思える。
3.結末があまりに投げやりに見える。問題を提起するだけではなく、ローマーなりの解答を示して欲しかった(例えば、考えてみると『優しい侵略者』がまさにそれを成し遂げている。)。調べてみたところ本書の刊行年は1971年――すなわちローマーが重病に倒れた年である。それが終盤に力が入っていない理由なのかもしれない。
ともあれ、キース・ローマーは実にいい。元から十指に入るほど好きな作家だったが(*2)、ますます好きになった。誰かもっと翻訳してくださいお願いします……
*1 私は単なるアクションSFも当然大好物である。
*2 『優しい侵略者』と『タイムマシン大騒動』はオールタイム・ベスト。