『異星の隣人たち』に続き、読み忘れていたかもしれないチャド・オリヴァー作品。読み進めてみたところ覚えのある箇所に全く出会えないまま最後まで行ってしまった。どうやら本書も実際に読み忘れていたようだ。
感想としては全く面白くなかった。着想は良いのだが、それ以外の全てが悪く、せっかくのアイディアが活かされていない。
心あるSF作家が本書の着想を具現化するならば前半はスリラー仕立てにして、中盤でスリラーからSFへの遷移という美味しい展開を描き、そして終盤はSFとして興奮のうちに物語を終えるだろう。しかし実際の本作は終始落ち着いていると言えば聞こえは良いが、あまりにも平板で起伏に乏しく退屈だ。
そしてSF的整合性にも不満がある。どうして恒星間飛行やら何やらを実現している種族が産児制限もテラフォーミングもダイソン球も実現できないのか? 仮に文化的・宗教的・その他非合理的な理由があって合理的な人口過剰対策が取れないとしよう。しかし代替案が「人口が希薄な半野蛮惑星に、原住民に変装して少しずつ移住する」というのはあまりにも合理性がない。この作中世界の文明惑星と非文明惑星の比率は明かされていないが、バレない程度の移民では人口問題解決策としては焼け石に水なのではないか? ひょっとするとこれは大掛かりな侵略の準備段階に過ぎず、主人公は騙されているのでは……?