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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

シェクリイ 人類の罠 レビュー

【ビブリオグラフィ】
題名:人類の罠
原書:The Poeple Trap (1968)
著者:ロバート・シェクリイ
訳者:井上一夫ほか
レーベル:ハヤカワ・SF・シリーズ (No.3257)
出版年:1970年8月

【経緯】
シェクリイの邦訳された短編集は、大半が持っているし残りも全てヘヴィーローテーションしていたつもりが、たまたま本書を久しぶりに読んだところ覚えのない作品ばかりだった。どうやら未読だったか、昔一・二回しか読んでいなかったようだ。
というわけでレビューすることにした。

【内容と感想】
全14編を収録。
(1)人類の罠(The People Trap/井上一夫訳/26ページ)
表題作。人口過剰の未来社会。年に一度、マイホームを手に入れるための致死的なレースが開催される。これに参加した一人の男を通して、唾棄すべき未来社会が描かれる。
→出来はイマイチ。シェクリイの「唾棄すべき未来社会での致死的なゲーム」ものと言えば『地球巡礼』、『グレイのフラノを身に付けて』、『不死販売株式会社』、『七番目の犠牲者』など多数あるが、それぞれ独自の迫力があった上記作品と比べて、本作は魂の抜けた焼き直しにしか思えない。ただただ不快なだけでSFとしての見どころもない。
(2)生贄降臨(The Victim from Space/矢野徹訳/26ページ)
一人の地球人が素朴な惑星に着陸し、西欧文明の力で素朴な村人たちに貢献する。そしてお決まりの「相思相愛な村の娘」との婚礼の儀が近づくが……
→シェクリイの短編にはよくある「価値観反転」もの。だが戦慄の『怪物』などと比べるとどうしても必然性不足な、冴えない凡作に感じる。
(3)ちょっとお話しませんか?(Shall We Have a Little Talk?/浅倉久志訳/32ページ)
語学自慢の男が、才能を生かして一旗揚げるべくとある惑星へ。驚異的な短時間でそこの言語をモノにしたつもりが……
→イマイチ。ひねりが足りないと言うか、SF的感性に響くものが無い。
(4)禁断の園(Restricted Area/井上一夫訳/24ページ)
地球からの探検船がとある惑星に着陸。平凡な地球型惑星かと思いきや、彼らが出会う全てがちぐはぐで……
→イマイチ。これだけの枚数を使ってその程度のオチとは残念だ。
(5)思考の香り(The Odor of Thought/仁賀克雄訳/14ページ)
宇宙郵便船がとある惑星に不時着。宇宙郵便配達員は救助を待つ間、過酷な風雨や襲い来る猛獣たちと戦う。
→惜しい作品。せっかくのSF的アイディアとストーリーが噛み合っていない。
(6)必要なもの(The Necessary Thing/井上一夫訳/18ページ)
「AAAエース星間浄化サービス」もの。グレガーとアーノルドは、荷物を減らすべく、中古屋で格安で手に入れた「万能構成機」だけを宇宙船に積んで離陸するが……
→本書の中では良い部類だった。だがシェクリイの作品全体の中では中の下程度か。
(7)レドファーンの迷路(Redfern's Labyrinth/井上一夫訳/8ページ)
よく分からん。
(8)論より証拠(Proof of the Pudding/都築道夫訳/14ページ)
最終戦争を逃れて宇宙に逃げた男が、頃合いを見て無人の地球に戻る。男は読む者もない石碑を作って無聊の時を過ごすが、ある日、密航者を名乗る女が現れ……
→よく分からん。
(9)ラクシヤの鍵(The Laxian Key/浅倉久志訳/16ページ)
「AAAエース星間浄化サービス」もの。またまた中古屋で格安の超機械を入手した二人。メルジ人の主食、タングリーズを無限に生み出す機械という触れ込みだが……
→本書の中では良い部類だった。だがシェクリイの作品全体の中では中の下程度か。
(10)最終兵器(The Last Weapon/稲葉明雄/14ページ)
古代火星人の遺跡に侵入した三人の悪漢。三人は互いを出し抜きながら、かつて火星を滅ぼした最終兵器を探すが……
→平々凡々。
(11)釣りの季節(Fishing Season/井上一夫訳/20ページ)
とある団地で頻発する人間蒸発事件。果たしてその真相は?
→普通。
(12)夢の世界(Dreamworld/井上一夫訳/14ページ)
よく分からん。
(13)外交官不可侵特権(Diplomatic Immunity/井上一夫訳/26ページ)
超文明の惑星からやってきた外交官――と称する侵略者。超フィールドで防護されたこの宇宙人をいかにして退治するか? 地球人たちは知恵を絞るが……
→まあまあだった。
(14)幽霊第五惑星(Ghost V/矢野徹訳/23ページ)
「AAAエース星間浄化サービス」もの。グレガーとアーノルドは久々に本業の惑星浄化を請け負った。しかし、対象の惑星の真の問題は、幽霊が出ることだった……
→オチのレベルが低くて拍子抜けした。本書の中では中の中くらいかもしれないが、シェクリイとしては下の部類。

【総論】
「AAAエース星間浄化サービス」シリーズの作品が三つも入っているのは嬉しいし、他の作品にも光る点がないわけではない。しかし全体として質の低さはやはり否めない。シェクリイの短編集の中ではワーストと言わざるを得ない。
やはり鬼才シェクリイと言えども齢を取れば衰えるということか。……それともこちらがSF初心者の純粋な精神を失ってしまったせいで楽しめていないだけだろうか?
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