【収録】
Astounding Stories, April, 1931(プロジェクト・グーテンベルク)【経緯】
2年ほど前、ウィリアムスンのなるべく初期の作品が読みたくてPGを漁っていたらピンと来たのでブックマークしていたもの。ようやく理想の環境が整ったので、全面的にそれ(みらい翻訳+yadatta)に頼って読んだ。
日本語を読むののせいぜい2~3倍程度の時間と労力で読めた
(※翻訳を掛けやすいようにHTMLを下処理するのに使った時間を除く)。素晴らし過ぎる。
【内容紹介】
2人の男が飛行機による南極探検に挑むが、謎の光線に撃墜される。〔ネタバレ回避白文字開始〕
光線の出どころはカニ型知的生物の都市だった。いったんはカニに捕らわれた彼らだが、19年前に捕らわれていた探検家夫婦の忘れ形見の乙女と協力し合い、艱難辛苦の末3人で脱出に成功する。〔ネタバレ回避白文字終了〕
【感想】
極地がSFの舞台たりえた最後の時代の香気がとても良い。作中でも言及されているバード少将の南極飛行が1929年なので、本作はその興奮冷めやらぬ時期に書かれたのだろう。
荒削りながら、後年の作品でも見られるモチーフが垣間見えるのも興味深い。例えば主人公が飛行家である点。これは『火星ノンストップ』でより高い必然性と深みをもって描かれる。あるいは「無脊椎動物的なBEMに搾取される聖なる乙女」。これは『宇宙軍団』でメデューサに拷問を受けるアラドレを思わせる。
ぜいたくを言えばSFとしても活劇としてももう一工夫欲しいところであるが、水準未満ではないし、雰囲気が良く、また時代やウィリアムスンを知る上でも意義のある作品だと言えるだろう。