《ジェイムスン教授》シリーズ第1巻。急に読みたくなり、どえらく久しぶりに精読で通読。
文句なしに面白い。奇抜なガジェット、牽引力のあるプロット、そこはかとないユーモア、……面白いSFを実現するために作者がありとあらゆる努力を払っていることが察せられ、そしてその全てが功を奏している印象だ。初期のSF(特にエンターテイメントSF)には現代人の成人から見れば技巧的に稚拙と言わざるを得ないものが少なくないが、本作はそうではなく、実に洗練されている。戦前型スペースオペラの一つの完成形と言えるだろう。実は、私はこれまで本シリーズを(その歴史的意義や愛嬌は認めつつも)実際に現代の成人であるSF読者の鑑賞に堪えうるものとは思っていなかったが、全くの間違いだった。目が節穴だった。大いに反省するものである。
野田昌宏の翻訳も、いつにも増して冴えわたっている。一見軽い文章だが入魂の仕事であることが窺える。藤子・F・不二雄のイラストレーションも、以前は「話題性を狙った安易な起用で、悪くはないが良くもない」と思っていたが、客観的に見て高品質なSFアートであり、コミカルさも漂う画風は作品の雰囲気とも合っており、むしろ最適任者だったと悟った(敢えて対抗馬を挙げるならば水野良太郎だろうか?)。とにかく過去の自分の見識の無さに驚く。
そういうわけで一挙に読み通してしまった。ああ、やはりSFは良いなぁ。