『ファンタジーの歴史 空想世界』がとても良かったので、これまで敬遠していたリン・カーターの小説作品に食指を伸ばしてみたわけである。『ゾンガー』シリーズは自分には合わない可能性が高い(昔1巻だけ流し読みして、全く乗れなかったというおぼろげな記憶がある)ので、おそらく未読である本書を読んでみた。
で、結論としては今二つだった。
何をやりたかったのかは痛いほどよく分かる。バローズ作品に対する熱いオマージュである。しかし、全くもって成功していない。序盤は多少雰囲気が出ていたが、中盤以降は薄いと言おうか浅いと言おうか、力が無いと言おうか、ともかく読むに耐えない。
同じニッチの作品(戦後に書かれたバローズ作品オマージュ)でパッと思いつくもの――ムアコックの《新しい火星の戦士》シリーズ、ジョン・ノーマンの《反地球ゴル》シリーズなどと比べるとあらゆる面で劣ると言わざるを得ない。それどころか素人臭さが拭いきれないデイヴィッド・レイクの《ジューマ》シリーズと比べてさえ、総合的に見てだいぶ落ちる。
創作に、愛情と熱意は必須だが、それらだけでは何も達成できないという冷酷な現実の現れである。やはり、この人はファン・研究家・編集者としては一流なのだろうが、創作の才能や技術には欠けているのではないだろうか。