作者不詳
"Der Luftpirat und sein lenkbares Luftschiff 1: Der Beherrscher der Lüfte" (Project Gutenberg)
仮邦題:空中海賊およびその操縦可能な飛行船1:空の支配者
刊行年:1908-1911
【経緯】
小学生時代に出会った良書の一つ、草土文化社の『ジュニアSF選・別巻 SFなんでも講座』(横田順彌編)。今にして思うにその中でも特に卓越していたのが第二部『世界のSFの歴史』(松中正子(*1))であり、私のSF知識の根幹はこれで醸成されたと言っても過言ではない。
この論考は総合的に見てバランスが良く落ち度のない優れたものである。そして、これをさらに私が称賛したいのは、「日本の論客がほとんど(あるいは全く)触れない作家や作品についても言及している」点である。例えば
ロバート・ポッターの『細菌培養者たち』"The Germ Growers" (1892)、ジョージ・グリフィス、フランク・オーブリイ、「フランク・リード」シリーズ、G・P・サービス、イタリアの雄エミリオ・サルガリなど。
とは言えこれらの作家や作品は長ずるにつれ、そしてインターネット時代に突入するにつれ段々と情報が得られたり実際に読めたりして、ある程度は消化できたと言えなくもない。しかしその中で全くもって謎だったのがp.29-p.30で言及されている本作である。引用してみよう。
アメリカには一九三〇年代の後半になるまで、スペース・オペラ以外のSFはほとんど現れなかった。(改行)アメリカ以外の国ではどうだったかというと、二十世紀はじめ、ドイツで、太陽系をところせましとかけめぐる〈宇宙海賊キャプテン・モールス・シリーズ〉が一九〇八年から書かれ、イタリアにはエミリオ・サルガリ、中国には『新法螺先生譚』(一九〇五年)の東海覚我こと徐念慈などがいたが、特にソビエトには、数々の問題作が生まれた。
当時から興味は惹かれていたものの、そもそも私のドイツ語読解能力は実用レベルにはほど遠く、原文を入手しても事実上読めないので意味がないという事情もあり、長年の間調査することすら怠って来たのである。
それが最近、独文和訳に関しても無料の(*2)機械翻訳がようやく実用レベルに達したことを数年遅れで認知したことを機に、本書について調べてみたところWikipediaに項目があり、Project GutenbergやInternet Archiveで原文が(長大なシリーズのうち一部の作品が)読めることをようやく知ったため読み始めてみたものである。
【梗概】
パリから飛び立った二人の気球乗りが、高空で謎の飛行船に遭遇する。自由自在に操縦できる、超テクノロジーの飛行船である(*3)。
飛行船の男は気球に言い放つ。「自分こそはキャプテン・モールス、空の支配者」だと。
【感想】
風説のとおり、非常に『征服者ロビュール』的である。これがどうスペースオペラに発展していくのか楽しみである。
*1 この人物は一体何者なのか。子供のころは著作物には著者がいるという意識が薄く、特に興味も抱かなかったが、『SFなんでも講座』の「おわりに」(横田順彌)によると次のとおり。
松中正子(まつなか せいこ) 佐賀県生まれ。日本大学卒業。中学時代からSFファンで、大学時代はSFクラブで活躍した。卒業後は、出版社でアルバイトをしながら、SFや童話に取り組み、新聞、雑誌のコンテストに入選。現在はフリーライターとして、SF雑誌などに原稿を書きながら、小説の勉強をしている。趣味はホラー映画を見ること。(p.195~p.196)
しかし本書以外では全く名前を見た記憶がない…。「SF雑誌」というのはSFマガジンだろうか? ちょっとバックナンバーを見直してみようか。
*2 利便性向上のため、またいつまでもフリーライダーをしていては申し訳がないのでDeepLは最安のサブスクリプションに加入した。
*3 航空史に明るくない方のために説明すると、当時、エンジンは重い割に非力で飛行船は「操縦可能」と評するには少々足りなかった。特に軟式飛行船は実用性に限界があり、ツェッペリンによる硬式飛行船の開発が進められていた。なお、重航空機も実用段階には至っておらず、長距離あるいは長時間の飛行は実現できていなかった。