著:L・P・デービス
訳:白木茂
あかね書房 少年少女世界SF文学全集 Vol.6
次元ものの秀作。極めて久しぶりに再読。
現代イギリス。大学教授と助手が謎の失踪を遂げる。主人公(学生)、相棒(画家)、別の教授の三人組は、失踪者たちの行方は異次元だと推察し、研究所に残された装置を修理するが――
ジュブナイルSFにおける次元テーマSFのチュートリアルとして、そしてフォーティアンテーマのチュートリアルとして秀逸である。
また、全編に漂う独特のアトモスフィアーー不安感の入り混じったセンス・オブ・ワンダーとでも表現すれば一割くらいは伝わるだろうかーーは他の追随を許さない。この卓越した特性は『虚構の男』にも見られる。後年、『虚構の男』を読んだ時はそれでとても嬉しくなったものである。
イラストが山本燿也であることは今にして気付いた。良きSFアートであり、作品にとても良く合っており、互いが互いの価値を高めている。
それにしてもL. P. Daviesの名前が何らかの媒体で言及されるのを私は全く見たことがないのだが、福島正実・白木茂ら編集陣はこの作品をどこからどうやって発掘してきたのだろうか(SFよりもミステリ系、ホラー系でなら少しは知名度もあるのだろうか?)。プロの情報収集力とセンスは凄いな。そういうところも含め、少年少女世界SF文学全集において着目すべき作品の一つである。
追記:『忌まわしき絆』 が邦訳されたのを知って以来読もう読もうと思いつつ結局未だに読んでいないことを思い出した。近日読もう。
追記2:ISFDBでL. P. Daviesを見たら他にも面白そうな作品がいくつもある。誰か翻訳してください本当にお願いします。