忍者ブログ

プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

リン・カーター『ファンタジーの歴史 空想世界』感想

リン・カーター『ファンタジーの歴史 空想世界』
Imaginary Worlds: The Art of Fantasy (1973) by Lin Carter
東京創元社 キーライブラリイ 2004年 訳・中村融

【経緯】
思い出せる限りではたぶん読んだことがなかったところ、数日前なんらかの理由で興味を持ったことと、このあたりを読んでいないのはさすがに不味かろうと気づいたので読んでみた。

【感想】
面白かった。勉強になった。やはり真のSF者なら、純然たる《ファンタジー》に純然たる興味があるわけではなくても、隣接分野の概要くらいは押さえておかなくては。

リン・カーターと言えばハヤカワ文庫からバローズ亜流だったかハワード亜流だったかの二流半な準SF作品を二・三シリーズ出しているだけの二流半作家でしかない……と認識していたが不充分な認識であったことに気づいた。《ファンタジー小説》に対する知識、見識、そして熱意は明らかに本物だ。リン・カーターは、創作者としてはひょっとすると二流半かもしれないが、ファン、評論家、編集者としては素晴らしい人物であることが明瞭に感じ取れた。

【今後の抱負】
私は《ファンタジー小説》については必ずしも網羅的・系統的に読んで来てはいないので、本書を元に一度おさらいをして行こうと思う。とりあえず:
①ロード・ダンセイニ。昔から読まねばと思いつつほとんど読んでいなかったのでこれを機に読みたい。
②『ウロボロス』。前世紀から積ん読状態なのでこれを機に読破したい。
③そして“これまで書かれた最高のファンタジー小説”である『永遠の王』。恥ずかしながらこれまで認知すらしていなかった。早めに読みたい。
④あと、ついでにリン・カーターの邦訳作品も昔々一部を流し読みした程度だったと思われるのでなるべく復習したい。

【《ファンタジー》という用語について、あるいはファンタジー中華主義】
私の認識する《ファンタジー》と本書における《ファンタジー》は、若干範囲が違うようだ。

『マラカンドラ』や《ノースウェスト・スミス》やラヴクラフトやホジスンが《ファンタジー》なのか…? うん、まあ、確かにそう言えないことはないとは思う。もちろんファンタジーであることとSF(あるいは怪奇小説、あるいは宇宙的恐怖小説)であることは排反ではないので、カーターの見解は間違ってはいない。しかしどうしてもこの人の論調からはファンタジー中華主義と言うかファンタジー中心主義と言うか、そういう思想を感じ取ってしまう…。

【安定の中村融】
この人もやはり素晴らしい。末永く壮健で日本のSF界を牽引してほしい。

【安定の武部本一郎】
カバー画は《金星シリーズ》からの流用のようだが、文庫版より二回りくらい大きいサイズで見直すと、ますます良い。武部本一郎の素晴らしさを改めて感じた。

SFを読む上で、日本に生まれてしまうことは不運と言える。ほぼメリットがない割に、言語的困難性、作品の入手困難性という大きなデメリットがある。武部画伯のような魅力的なSFイラストレーターが存在する点は、ほぼ唯一のメリットであろう。
PR

コメント

プロフィール

HN:
匿名(仮称:プロジェクト・サイラス・スミス管理人)
性別:
非公開

P R