とても面白かった。
「ファンタジー」の、一つの究極形を達成した稀有な作品だ。トールキンは、C・S・ルイスは、ジョージ・マクドナルドは、ダンセイニは、ライマン・フランク・ボームは、R・E・ハワードは、C・A・スミスは、果たして想像しただろうか。自分たちの撒いた種が極東で、漫画というメディア形態で完全なる開花を遂げることを。本作には――究極的に優れたSF・ファンタジーに共通の美点であるが――人生、宇宙、全ての答えが示されている。
実は以前無料キャンペーンで本作を1・2巻だけを読んだことはあったのだが、その時は近年よくある(と言うか、SF読者に言わせれば40年代に『アンノウン』でさんざん試みられたことの二番煎じに過ぎない)パロディ的ファンタジーだと――その範囲内では巧みに描かれてはいるものの――だと思い込んでいた。自分の読みの浅さに呆れ返る。本作は『アンノウン』派が歪に、不完全に、萌芽的に、実験的にしか成し得なかったことを遂に本当に成し遂げたのである。ファンタジーには疎いので間違っていたらすまないが、これは恐らく人類史上初の偉業ではないか。
とにかく近年で最高の読書ができた。作者に心からの礼賛を。そして1・2巻あたりを読んで撤退したSF者は、騙されたと思ってもう2・3冊読み進めることを強く勧めたい。