作 ヨアヒム・ハインリヒ・カンペ (Joachim Heinrich Campe)
原題 Robinson der Juengere (1848)
刊行 鳥影社 2006年
訳 田尻三千夫
面白かった。かつて星の数ほど書かれたという『ロビンソン・クルーソー』の亜流・盗作・パスティーシュ。その大半はすぐに忘れ去られたらしいが、本作は長年に渡り愛読されてきたというのも納得できる。
(素人考えだが)本作の主旨は『ロビンソン・クルーソー』における(児童向けの)教育的要素を抽出し、ドイツ的プロテスタンティズムを加えて増幅・再構成することであろう。素人考えだがそのコンセプトは大成功しているように思える。勤勉、誠実、理性、寛容を美徳とするその思想は現代日本人にも納得できるものである。ただしキリスト教、特にプロテスタントのみを唯一の「真理」と断じ、「蒙昧」な「異教徒」やカソリックを「改宗」させることを「善」、いやむしろ「義務」と捉える姿勢は現代日本人からするとあまりに狭量、傲慢、幼稚あるいは狂信的に感じられる(とはいえ
書かれた時代や背景も含めて鑑賞するのが真の読書家なのだが)。
とにかく実に志のある出版物だ。もっとロビンソナーデが読みたくなった。誰か翻訳してください。