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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

J・H・カンペ『新ロビンソン物語』感想

作 ヨアヒム・ハインリヒ・カンペ (Joachim Heinrich Campe)
原題 Robinson der Juengere (1848)
刊行 鳥影社 2006年
訳 田尻三千夫

面白かった。かつて星の数ほど書かれたという『ロビンソン・クルーソー』の亜流・盗作・パスティーシュ。その大半はすぐに忘れ去られたらしいが、本作は長年に渡り愛読されてきたというのも納得できる。

(素人考えだが)本作の主旨は『ロビンソン・クルーソー』における(児童向けの)教育的要素を抽出し、ドイツ的プロテスタンティズムを加えて増幅・再構成することであろう。素人考えだがそのコンセプトは大成功しているように思える。勤勉、誠実、理性、寛容を美徳とするその思想は現代日本人にも納得できるものである。ただしキリスト教、特にプロテスタントのみを唯一の「真理」と断じ、「蒙昧」な「異教徒」やカソリックを「改宗」させることを「善」、いやむしろ「義務」と捉える姿勢は現代日本人からするとあまりに狭量、傲慢、幼稚あるいは狂信的に感じられる(とはいえ書かれた時代や背景も含めて鑑賞するのが真の読書家なのだが)。

とにかく実に志のある出版物だ。もっとロビンソナーデが読みたくなった。誰か翻訳してください。
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