《ルパン》シリーズの極めて秀逸かつ良心的なコミカライズ。たまたまKindle Unlimitedで見かけて、特段期待もせず読み始めたのだがあまりの面白さに一晩で(公開されている分は)全て読破してしまった。
本シリーズの美点を端的に列挙すると次の三点である。
1.原作に対する深い理解とリスペクトが感じられる。
2.現代の日本人読者に原作の魅力を伝えるため、的確かつ最小限のアレンジが成されている。
3.漫画というメディア形式を活かしている。
これらが三位一体を成し、相乗効果を上げている。その技術と熱意を心から称賛したい。
自分も一応読書家の端くれなので《ルパン》シリーズはおおむね履修していた(*1)はずだったのだが、その真価を理解していなかった(*2)ことを悟った。すなわち
A.アルセーヌ・ルパンという男は単なる泥棒、単なる色男、単なる愉快犯ではなく、実に複雑な魅力のキャラクターだと理解できた。
B.この風雲児を生み出した時代背景の一端が理解できた。
C.《ルパン》シリーズが日本ではもっぱら児童向け作品として扱われて来たことの不当性が理解できた。
自らの不明を恥じるばかりである。
とにかく、良い読書をさせてもらった。続きが楽しみだ(調べたら、普通の商業誌→怪しげな商業誌→自費出版 と移行しているようだ。頑張って欲しい)。
*1 主に偕成社のアルセーヌ=ルパン全集で。一部はポプラ社の怪盗ルパン全集や創元推理文庫の《リュパン》シリーズで。また、
一峰大二のコミカライズ版で再履修もしていた。
*2 以前のエントリ ルブラン『バルタザールのとっぴな生活』感想 も参照。