副題:大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話
訳:沼野充義、芝田文乃
国書刊行会 1995年
面白かった。冷戦時代のポーランドについてはーーいや時代を問わずポーランドについてはーーほとんど何も知らないが、素直に空想小説として楽しく読めた(その観点から言えば前半に出来の良いエピソードが多いように思える)。また、いくつかのエピソードは共産主義独裁政権に対する風刺だと素人ながらも理解できた。
良書である。
なお訳者の後書きに「どうしてこの本がこれまで翻訳されていなかったのか理解に苦しむ」というようなことが書いてあったが、その答えは明々白々であり、小学生でも一瞬で洞察できることだろう。それは「東欧文学(特に空想小説)のほぼ唯一の翻訳者であるあなたが翻訳していなかったから」である(*1)。
しかし私が理解に苦しむのは、どうして私がこれまでこの本を読んでもいなければ認知もしていなかったのか、である。図書館でも本屋でも、東欧文学のコーナーは実に狭い。そのため一見してSFーーあるいはそれに至らないまでも空想小説ーーがあれば、非英語圏海外SF好きの私はすぐに気づいて手に取っていたはずである。沼野充義の名が背表紙にあれば尚更である。反省するものである。
*1 それを重々分かった上での修辞的、自罰的、あるいは自分以外に人材がいないことを嘆く発言なのかもしれない。