刊行されたことは認知していたが、
①収録作品は基本的に既存の短編集で読んでいたつもりだった
②日本の出版社が勝手に編んだ作品集だと誤解していた
のでこれまで無視していた。
それが最近、①短編『ミラー・イメージ』(*1)が本書に入っていることを知り、なおかつ最寄りの図書館に本書が所蔵されていることに気づいたので借りて来たものである。そしてこれが②そういう原書の翻訳であることも知った。不勉強だった。
以下各作品の感想。きわめて数が多いので厳選して抜粋で。
『ミラー・イメージ』…苦労人イライジャ・ベイリの人間的洞察力が冴える。SFとして、あるいはミステリとして特に凄い作品でもなかろうが、ファンとしては嬉しい一品である。この調子でもっと量産してくれても良かったのに。
『堂々めぐり』…本当に面白い。単純素朴ながらロボットテーマ(と言うよりアシモフのロボット工学三原則テーマとラベリングすべきか)の極致であり、科学的問題の発生と工学的解決というSFの最も本質的なテーマの一つの極致でもある。世間でアイザック・アシモフが“SF御三家”としてもてはやされていることに実は私は若干異論もあるのだが、パウエル&ドノヴァンもの、特に本作『堂々めぐり』は黄金時代初期を代表する短編SFの最高傑作だと思う。*2
*1 『SFミステリ傑作選』は講談社文庫BXの中でもおそらく入手困難度が高く、またこれまで居住した土地の公立図書館に都合よく所蔵されていることもなかったので、イライジャ&ダニールもののが大好物であるにも関わらず遺憾ながら長年のあいだ未読だった。
*2 小学生当時、エスエフ世界の名作(またはSFこども図書館)版の「くるったロボット」で本作を読んで感銘を受けた記憶がある。その刷り込みのせいかもしれないが…。