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『アンドロイド』は座右の書の一冊であり何十回となく精読しているのだが、BOOK-OFFの百円コーナーでたまたま現物を目にして初めて、新装版(佐藤道明画)が存在しているのを認知した。文庫版旧装版(吉元学画)も嫌いではなかったが、この新装版には一目惚れしてしまい、久しぶりに意図的な重複買いをしてしまった。
絵の中心、赤い服の美女(マリオンAなのだろう)が実にシャープで艶やかで、パワーを感じる。後ろの未来風車両も冴えたデザインをしている。遠景の未来都市も悪くない。全体として主題の雰囲気がよく表現された、良きSFアートだと言える。技術・熱意・センスが三位一体となった結果だろう。良い小説と良い絵画が相互に価値を高め合う……そういう好循環が、私は大好きだ。
佐藤道明と言えばハヤカワ文庫SFのカバー画や口絵で(挿絵でも?)結構よく見る画家だが「今ひとつパッとしないSF作品に対して今ひとつ熱の感じられない絵を描く人」という印象だった。しかし、それは誤りであり、自分がこの画家の本領を知らずに不当な評価をしていたことがよく理解できた。
また、新装版と言えば悪の代名詞(*1)であるのが常識なこの界隈で、旧装版に勝るとも劣らないクオリティを実現したという稀有な偉業に対しても賛辞を贈りたい。
というわけで1・2年ぶりに再読。やはりマスターピース級の面白さだ。クーパーの邦訳作品のうち唯一文庫化されたのが本作であるのも肯ける(『転位』や『遥かなる日没』も個人的にはかなり好むところではあるのだが)。