『虚空の遺産』の訳者あとがきで、方向性の近い短編として『虚空の死』が挙げられていた(読んだことはあったような無かったような…(*1))。読みたくなったのだが、それが載っている唯一の書籍であるハヤカワ・SF・シリーズ版『フェッセンデンの宇宙』が手元に無かったので(読んだことはあったような無かったような…(*1))、ちょっと検索してみたところ原文が載ったスタートリング・ストーリーズの1946年春号がインターネット・アーカイブで閲覧できると気づき、原文で読んでみたわけである。
短めの短編だったので(6ページ。約2万5千文字、約4千語)、久しぶりに練習を兼ねて自力で読んでみた。ハミルトンの文章は比較的癖のない良文なのだろうか、また、無理に日本語にしようとせずそのまま理解するに留めたためか、ぼやけ切った頭でも意外と現実的な速度で大意は掴める程度には読めた。
で、なかなか良い短編SFだった。前半は一見するとただの紋切り型の宇宙SFなのだが、話が進むにつれて"虚無的なほうのハミルトン"になってくる(そして、確かに訳者が言うようにモチーフは『虚空の遺産』と共通性が高く、興味深い)。またショートショートSFとしてプロット的にも優れている。
こういう短編は――特に未訳作品を含めれば――いくらでも埋もれているのではなかろうか。誰か発掘して欲しい。
*1 若いころはどのSFを読んだことがあるかないか、あるならどこでどう読んだか、持ってるならどこでどう入手したかまで全て記憶していたものだが……。歳を取って記憶力が衰えたのだろうか。それとも人間には記憶量の限界があってそれに達したのか。とにかく最近はそういうことを思い出せなくて困る。