蔵書より。急に読みたくなって久しぶりに再読。
まあ、現代人の成人からすれば他愛のないスペース・オペラなのだが、レイ・カミングスらしいえも言われぬ味わいがあることは誰も否定できまい。そして本作の特色は、ヒロインが魅力的――若干の翳がありつつもけなげで可愛らしい――であることだろう。
田中みなみという画家ーー少なくともSF界隈では本書を除き全く見たことのない名前だ。何者だろうーーのイラストレーションも、当世風のおしゃれさと作品への適合度を兼ね備えており、悪くない。
『時の塔』、『時間を征服した男』、『宇宙の果てを超えて』…初期の早川書房が3冊の邦訳を出してくれたのがまだしも幸いであったが、全然食い足りない(*1)(*2)。誰かもっとーー中・短編も含めてーー翻訳してくれないものだろうか。
*1 『宇宙の果てを超えて』の巻末解説で野田昌宏が早川書房からの刊行を匂わせていた2冊のうちの片方が本書であるが、もう1冊の『The Men on the Meteor』は未だ刊行されていない。甚だ遺憾である。
*2 久保書店からなぜか刊行された2冊もいちおう読んだことはあるはずだが、全く内容を思い出せない。多分あまり面白くなかったのだろう。