Astounding Stories, July, 1931 by Various(Project Gutenberg)
レイ・カミングスが読みたくてプロジェクト・グーテンベルクを漁っていたらジャック・ウィリアムスンの面白そうな作品――Astounding誌の表紙絵になっている作品――があったので読んでみた。
絶海の孤島を舞台に主人公の青年が自己犠牲的な働きにより乙女を助け、ひいては地球を侵略者から救うというプロットはシンプルながら良い。善意のファースト・コンタクトのつもりでいた科学者たちが火星人の無線操縦ロボットを作らされてしまうという着想もすぐれている。ウィリアムスンらしい空気感も心地よい。
なのでもう一工夫するかもう少し丁寧に作りこめば『火星ノンストップ』にも匹敵する傑作になり得た作品だと思うが、総合的に見て並み程度に収まっている。
その原因は一にも二にもヒロインに魅力が足りない(あるいは魅力はあるのかもしれないがそれが伝わってこない)ことにある。そのせいで物語の全てが説得力を欠いてしまっている。普通の人は出会ったばかりの女(しかも恐らく数分程度話をしただけの女)のために命までは賭けないと思う。せめて火星ロボットを退治する方法に斬新なアイディアが認められれば挽回できたと思うのだが、そこも凡庸だったのが残念である。