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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ジャック・ヴァンス『ノパルガース』感想

おそらく2009年の初版以来、初めての再読。

どうしようもない駄作だと思っていたが、そこまでは悪くないことに気付いた。ヴァンスに我々が期待しているヴァンスらしさがほとんど無いし、作品の骨子は言わば『超生命ヴァイトン』の亜流に過ぎないが、
・ファースト・コンタクトを絡めている点
・ノパルにとり憑かれた人間がそうでない人間に本能的嫌悪感を抱くため、ただでさえ妄想扱いされて推進が困難な脱ノパル活動がさらに困難になる
など料理法がなかなか巧みで工夫が見られる。特に後者はSF読者(*1)が持つ根源的な感情――疎外感、強迫感、パラノイア的傾向、選民意識、「俺がうだつが上がらないのは寄生生物のせいだ」的思考回路……と強く親和し、心を揺さぶる。考えてみると本家『超生命ヴァイトン』にも萌芽的には見られた特徴であるが、うまく強化してある。(考えてみるとそこを更にフィーチャーしたのが『ゼイリブ』なのだろう。)

*1 人によるだろうが。
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