瀬田貞二訳
岩波少年文庫版
急に読みたくなって久しぶりに再読した。
やはり傑作だ。ハイ・ファンタジーとしても、冒険小説としても、児童文学としてもいずれも非の打ち所がない。
寺島竜一という方のイラストレーションが優れているのも岩波書店版の美点であろう。後書きで触れられているドイツ語版・スウェーデン語版の「むしろ作品をきずつける挿絵」がどんなものかは知らないが、岩波版は絶対評価で全く文句なし。
これほどの傑作の続編群が退屈で冗漫な駄作ぞろいなのが甚だ遺憾に思える。
追記 「忍びの者」の原語が前々から気になっていたので、これを機に調べてみた。英語にそういう語や概念があるのか? ググった感じだと"burglar"が原語のようだが、今ひとつ信頼性の高い情報は見つからなかったので原書(Kindle版が350円とかなりお値打ちだった)を見てみた。やはり"burglar"だ。ふーむ。一般的な英和辞典だと「泥棒、強盗、侵入窃盗犯」などの訳語が当てられているが、『ホビットの冒険』を読む限りではビルボ・バギンズに求められているのはまさに「忍びの者」である。おそらく"burglar"には一般的な英和辞典に書いてある(単なる職業的犯罪者としての)「泥棒、強盗、侵入窃盗犯」以上の複雑なニュアンスがあるのだろう。そこを汲んで「忍びの者」としたのは名訳である。
ついでに「死人(しびと)のたましいをよびおこすうらない師」「死人(しびと)うらない師」の原語を確認したところ、やはり"Necromancer"だった。
さらに追記 トック家の血筋に混じっている(疑惑がある)「妖精小人」とは何か。原文を確認したところ、"fairy"であった。ふーむ。なお、全文検索をしたところ作中で他に"fairy"という語は使われておらず、作中世界で"fairy"が何を意味するのか判然としない。エルフとは別物なのかな? 超自然的存在なのか、それとも(ホビットと同程度に)現世的存在なのか?
さらにまた追記 かの悪名高き山本史郎訳を参照してみたところ、「妖精小人」は「妖精(ルビ:エルフ)」になっていた。まあ、一つの見解として参考にはなるだろう。
追記 『旅の仲間』を読んだ。この序盤で述べられているビルボ・バギンズの家系、これが(後付けかもしれないが)究極の答えと見るべきだろう。