前エントリに引き続き、《魔王子》シリーズ。第3巻。
序盤には覚えがあったが、中盤には覚えのある個所はあまりなく、終盤には覚えが全く無かった。おそらく加速気味に飛ばし読みしかしていないか、あるいは途中で放棄していたものと推察される。何となく過去の自分の特性と考え合わせても平仄が合う気がする。
というわけで実質初めて通読した。面白い。テクニック的に必ずしも最善では無さそうなところは多々あろうし、自分としては好きになれないところも多々あるが、それでもなおヴァンスの良い面の一つが結実した秀作であることは充分に理解できた。
新ヒロイン、ザン・ズー(仮)もなかなか魅力的だ。察するにヴァンスは"キャスの花"やアルース・イフゲニア・エペリェ=トーカイのような洗練された妙齢のお姫様ヒロインよりもこのザン・ズーやザップ210のような無垢あるいは野性的な少女ヒロインの方が得意なのではないか。熱の入り具合が違う。また、悪役も3人目にしてだいぶ味が出てきたように思う(とは言えあまり悪党側に三分の理みたいのを与えてしまうと物語の主軸である復讐の正当性が薄れてきてしまうのがアンビバレントなところだ。本書だとそこらへんの加減があまりうまく行っていない印象を受ける)。
結末も意外性と説得力があり、とても良かった。このごく短い終章があるだけで小説全体がぐっと引き締まり、出来が格段に上がっている。画竜点睛とはこのことだろう。
続きが(4巻以降の内容は全く思い出せないと気づいたことから、3巻以前よりなおさら不真面目にしか読んでいなかった疑惑が深まって来たので)楽しみだ。