《魔王子》シリーズ第四巻。
面白かった。当初、全く内容に覚えが無かったが、読み進めるうちにぼんやりと記憶が蘇って来た。しかし結末は全く覚えが無かった。やはり大昔、一度ならず読み始めてはみたものの途中で放棄していたようだ。
キース・ガーセンは生きたまま本懐を遂げられるだろうか? そして、万一そうなってしまったらこの男はその後どうするのか? 続きが楽しみだ。
酒井昭伸の巻末解説が極めて的を射ており(さすがはプロだ)、それ以上素人が言えることはほとんどないのだが、あえて少しだけ語りたい。本巻が、これまでの三冊よりさらに円熟味を増した秀作であることは間違いない。異星文化をリアルに、独特の味わいでもって描くヴァンスの持ち味が存分に発揮されていることも確かだ(ダー・サイはこのシリーズ中で最も精緻に、熱意をもって描かれた惑星であろう)。しかし
・ヒロインの魅力の無さ、ヒロインが登場する必然性の薄さが主人公の行動の説得力を損なっている。
・悪役レンズ・ラルクの悪辣さ、非人間性、狡猾さ、カリスマ性が全く伝わってこない。これもまたテーマを損ない、主人公の行動の説得力を損なっている。
ように思えてならない(私の読解力が不足しているのだったらごめんなさい)。総合的に見ると1巻や2巻よりは一段落ちる。実に惜しい。