長年のSF歴において第6巻を一度も読んでいなかったことが発覚したため、急遽読んでみた。
総評としては、「やはりあまり面白くない」。これらのハイブロウな作品を鑑賞するには私の知性が足りていないのではないかと言われてしまえば反論しがたいが、逆に作者たちやジュディス・メリルが頭が良すぎて実質的には頭がおかしくなっていたという私の見解にも一定の説得力が認められるのではないだろうか。
以下、収録作品数が多いので抜粋で感想。
ロバート・J・ティリー『ほかの何かを』・・・スタンダードな宇宙SFらしい序盤、中盤は悪くないのだが、結局オチていない(ように見える)のは私の読解力が足りないのだろうか。
A・K・ジョーゲンスン『成人の日』・・・アイディアは良いが、小説としてはオチていない(ように見える)のは私の読解力が足りないのだろうか。
ジョゼフィン・サクストン『障壁』・・・攻略困難な「壁」。その両側には恋焦がれ合う男と女。実に魅力的な設定だ(*1)。しかし今ひとつ終盤が腑に落ちないのは私の読解力が足りないのだろうか。
ウォルター・F・モウディ『生存者』・・・米ソが全面戦争の代わりに、定期的に100人対100人の戦争ゲームを開催するという、ややありがちな未来SF。ゲーム部分の描写が不要に念入りなのは許してもよいが、そこまで引っ張った割に結末が陳腐だ。これに関してだけは私の読解力不足ではない。ジュディス・メリル大先生はどこかをどうにかして深読みしてしまったのだろうなぁ。
フリッツ・ライバー『月面上の決闘』・・・フリッツ・ライバーなのに面白くない。これも実は深い寓意があるのだろうか。
トマス・M・ディッシュ『ゴキブリ』・・・本書で唯一面白かったのがこれ。狭義のSF小説ではないが、良い空想小説であり、味のある小説ではある。(*2)
アーサー・C・クラーク『メールシュトレームII』・・・昔SFマガジンのバックナンバーで読んで以来、クラーク中期の短編の中ではかなり好きな作品なのだが、5巻の『きらめく生きもの』と同様、正統派のハード・サイエンス・フィクションにしか見えず、どこがメリルのお眼鏡に適ったのか理解できない。実は寓意が隠されているのだろうか?
ジェラルド・カーシュ『遠からぬところ』・・・ジェラルド・カーシュらしい、迫真的で魂のこもった小説なのだが、軸が無く、オチてもいないように思えるのは私の読解力が足りていないのだろうか。
*1 『壁の中』、『見果てぬ風』、『夢の木の下で』・・・言わば「壁SF」に私は強く惹かれる。
*2 少々場違いな疑問であるが、「こち亀」の「トモダチ」回は本作の影響を受けているのだろうか…?