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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ジョン・ノーマン『ゴルの巨鳥戦士』感想

ゴル・シリーズ(反地球シリーズ)第一巻。蔵書より、久しぶりに再読。

やはり良い。バローズ・タイプの60年代式リヴァイバルとして、成功作と言える。独特の魅力に満ちている。

しかしこのシリーズで惜しまれるのは、作品の魅力――精気――勢い――そういうもののピークが1巻にあり巻を追うごとにそれが衰えるばかりであることだ。バローズ・タイプ小説の必然なのかもしれないが……。

それはそうと、久しぶりに読んだ「訳者(*1)あとがき」があまりにも的外れだと気付き、驚いた。引用しよう。
そういえば主人公のタール・キャボットもジョン・カーターやカースン・ネーピアといった先達とは少しばかり違う。体力に自信はあるが、頭はさしてよくはなく、オクスフォード大学を出てはいるが、アメリカの大学に歴史学講師の職は得たものの、ルネサンスと産業革命の区別がつく程度の歴史知識しかないという、はなはだいいかげんな男である。ゴルにおける活躍も決して正義感から発したものではなく、いわば周囲の情勢に流されて仕方なくそうしているようなところがある。むしろこれはヒロイック・ファンタジーというより、アンチ・ヒロイック・ファンタジーである。そのあたりが古典的な形式に盛り込まれた新味といってよいかもしれない。(p.277)(傍点は太字で表現)

まず、頭より腕っぷしが頼りなのはバローズ主人公もキャボットも似たりよったりであろう。そして「ルネサンスと産業革命の区別がつく程度の歴史知識しかない」とは本文における主人公の自称であるが、これを言葉通りに捉えるとは恐れ入った。

その割には主人公が「流され型」であり本作が「アンチ・ヒロイック・ファンタジー」であるという正しい結論が得られていることに更に驚く。



*1 永井淳
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