蔵書――いやむしろ死蔵書とでも言うべきか――より、きわめて久しぶりに再読。確か少年時代に図書館で一度読み、その後新古書店の100円ワゴンで見つけて購入したものの長年の間(ひょっとすると前世紀からずっと?)手に取ることなく今に至っていたのだが何となく再読してみたものである。
で、覚えのある個所に全くぶつからなかった。内容に関する記憶が揮発している可能性もあるが、むしろ自分の行動パターンからすると一度まともに読んだという記憶の方がが誤っている可能性が高い。おそらく図書館で借りるには借りたことは事実なのだろうが、内容が当時の自分にとっては退屈の極みであっただろうから、おそらく数ページしか読み進められずに返却したのだろう。
そしてようやく今回の感想であるが(*1)、あまり面白くなかった。タッカーの他の作品と同様、独特の雰囲気の良さはなくもないのだが、総合的に見てやはり良い作品、優れた作品とは言い難い。面白くない(と私が感じる)SFにありがちな事だが、いつまで経っても物語が本格始動しないと言おうか、どこまで読んでも「起」と「承」の間くらいの中途半端な状態が続くと言おうか、そういう根本的な病巣が感じられるのである。また登場人物にもストーリーにも魅力を感じなかった。時間SFとしても未来SFとしても新規性を見出せなかった。
察するに本書は時事的な性質の作品――執筆時点のアメリカ人というピンポイントな読者でないと腑に落ちないタイプの作品なのではないか。「われらがステーツ」の行く末にもキリスト教の聖典にも興味のない日本人にとっては楽しめなくて当然だ。その心境になり切って読書するスキルが私に足りないと言われればそれまでだが…
*1 前置きの長さ、他人にとっての無価値さが「食べログ文学」にも匹敵するほど極端であることを許してほしい。