『惑星ゾルの王女』
1.悲恋!惑星ゾルの王女の巻
2.弔合戦――惑星ミュムへ出撃!の巻
3.教授危うし!金属喰い怪物あらわる!の巻
1と2は、これまで具体的な描写が無かったゾル人たちの母星を描いており、生身のゾル人も登場するという意味では興味深い。しかし近隣の惑星ミュムとの惑星間戦争が主題となっており、食い足りない。もっとゾルの社会機構とか歴史とかを掘り下げて欲しかった。
3は題名のとおり、ゾル機械人たちが天敵とも言うべき金属喰い怪物に遭遇する話で、これまで彼らに鉄壁の防御力を与えてきた金属製ボディがかえって彼らの弱点になるという発想は良い。しかしそこ止まりでしかないのが残念だ。そこを踏み台にしてもう一手間加えれば秀逸なSFになっただろうに。
少々現代人的感覚からの評価になってしまっているかもしれないが、全体的に平凡な巻と思える。
『双子惑星恐怖の遠心宇宙船』
1.双子惑星恐怖の遠心宇宙船の巻
2.箱型惑星光球生物の怪の巻
3.音楽怪人はギャンブルが大好きの巻
1は、双子惑星と遠心宇宙船というガジェットが面白く、プロットもうまくそれを活かしている。良いスペースオペラだ。
2は箱型惑星という舞台――6面のそれぞれに特異な環境がある――が面白い。プロットとガジェットの相性も良い。ただしジョーンズが重力に関して根本的な勘違いをしているのが作品の価値を低めている(読み違えていたらごめんなさい)。
3は、昔から一度ならず読んでいるはずなのに全く覚えがなかった。どうやらこれまでは何度読んでも本書を2の途中で放棄していたようだ。
音楽のような言語を持つ異星人という着想は面白い。しかしそれが全く活かされておらず、火炎人という悪役も浮いており、全体的にチグハグで未完成な印象を受ける。
あとこの巻は巻末の「機械人人別帳」(竹川公訓)がとても有用だ。カバー折り返しの登場人物一覧が「〇〇×-△△△・・・ゾル人」みたいなクソの役にも立たない情報しかないので、なおさら有用さが引き立つ。
追記:「機械人人別帳」の寄稿者「竹川公訓」とは一体何者なのか。全く見たことのない名前だ。そう思ってググったら高千穂遥の別名らしい。インターネットの魔力は凄い。