しばらく前にProject Gutenbergで公開開始していた(*1)のは認知していたところ、ようやく読むモチベーションが上がってきたので読んでみた。
なかなか面白かった。
ジェイムスン教授シリーズの典型的なプロットは、ゾル人たちが二種の知的生物間のトラブル(または一種の知的生物内のトラブル)を解決するというものだが、本作は知的生物が(アジールという原始人レベルの生物はチョイ役で出てくるが本質的には)教授一行しか登場しない、自己完結的(?)でシンプルなプロットが珍しい。
ストーリーはやや平坦ではあるが、「タイムリミットが迫る中での脱出」という単一のテーマに集中しているとも言える。まあまあ緊迫感があった。
また本作は問題発生からの科学的・工学的な問題解決という王道的なハード・サイエンス・フィクションとしても読むことができる。ここも本シリーズ中では他にあまり見られない美点であろう。
ゾル人の宇宙船が「光速の数倍」の巡航速度を持つことが初めて明示された(*2)ことも興味深い。そして相対論的効果について特に何も触れられていないこともまたSF史的に興味深い。
*1 https://www.gutenberg.org/ebooks/69158
*2 これより前、特に邦訳されている作品で明示されているのを見逃していたらすみません。