特段の理由は無いがたまたま目に入ったので再読。ずいぶんと久方ぶりになる。もし最初の一度以来初めてだとすると、前世紀ぶりかもしれない。
意外と面白く、一気に読み通してしまった。「キャプテン・フューチャー」シリーズの中ではあまりパッとしない、二流半どころの作品だという印象を何十年も持っていたのだが、かつての私は少々目が曇っていたようだ。
まずテーマが良い。資源の枯渇で危機に瀕した水星を救うため、フューチャーメンが銀河系中心、「物質生成の場」に赴く。この目的意識が作品全体にリアリティと言おうか緊迫感を与えている。思えばかの力作『時果つるところ』や『さいはての星』も同じテーマであり、なぜかは分からないがエドモンド・ハミルトンにとって終生のテーマの一つだったのかもしれない。細部には陳腐な点も多い(*1)が、重厚なテーマがそれを充分に補えている。
そして聖域とその設置者、その信奉者と不信心者という構図は『虚空の遺産』や『生命の湖』でも見たものだがスペース・オペラである都合上明るめに描かれているのも面白い。
*1 例えばこれまでは惑星間航行しか出来ていなかった人類が、フューチャーメンだからといって一挙に――数行で!――超光速を実現してアルファ・ケンタウリどころか銀河の中心まで行ってしまうのはインフレーションが急激過ぎやしまいか。そして善玉王国と悪玉王国の星間戦争で善玉側に加勢するフューチャーという構図はあまりにも繰り返され過ぎたもので、再投入するならせめて何らかの工夫が欲しい。