ハヤカワ・ファンタジイ
桜井正寅訳
1961年
非英語圏海外SFは好きだがレムとストルガツキイは嫌いという性分(*1)のせいで、何十年もSF者をやっていながら本作を読んでいなかったし、読む気もほとんど無かった。それが何となく国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能なハヤカワ・ファンタジイの一覧を眺めていたらモチベーションが高まってきたので、重い腰を上げて読んでみたものである。
結論から言うと全く面白くなかった。何一つ評価できる点がない。どうしてこれがそこそこの古典的名作と評価されているのか理解しがたい。何と言うか、社会主義リアリズム小説である時点で評価に値しない。社会主義リアリズムとかいう暗号化(?)をデコードできる特殊な頭脳の読者がこの世界にはそんなに多いのか? そうとは思えないし、仮にそうだとしてデコードしたとしても本作の真の姿が名作であるかどうかは疑問である。
なお、翻訳もあまり良くないように感じる。訳者はドイツ文学者らしいが、ドイツ語版からの重訳なのだろうか? 調べてみると文庫版は新訳(沼野充義訳)なので、選択の余地がある人はそちらを読む方が良いかもしれない。
*1 お分かりいただけるだろうか、この複雑な心境を。