1~16巻
講談社
2017~2023年
ピンと来るところがあり、よく見たら『勇午』の人だったので読んでみた。
総評としては面白かった。コンセプト(*1)が良く、題材(*2)も良く、それらをうまく料理できている。作画は端正で力があり、悪くない。
軍事技術史的にも興味が尽きない。
現代人はつい「弓矢」や「火縄銃」を軽蔑の目で見てしまうが、17世紀初頭の西欧においてそれらが条件によってはフリントロック式の銃(出現してから比較的日が浅く、現場には火縄銃と共存していたようだ)に勝るとも劣らない脅威として描かれている。その最たる例が主人公の銃(日本の名工が作った火縄銃)で、軽量でバランスが良くなおかつマッチロック機構が優れているため振動が少なく、西欧の銃の数倍の射程戦場を有するため戦場のゲームチェンジャーとして描かれる。
また現代人はつい「先込め銃」や「規格化されていない銃器」を軽蔑の目で見てしまうが、弾丸や火薬の自由がある程度効く利点が描写されており認識を改めてさせられた。逆に、弾丸が銃口から零れ落ちそうになるので真下を撃つのは苦手という弱点も描かれており、興味深く思った。
続きが楽しみである。
*1 私も人並みに日本は好きなので、『勇午』然り『MASTERキートン』然り『ゴルゴ13』然り、「世界レベルに有能な日本人が日本的な良さも生かしつつ世界を股に掛けて活躍する」作品には心を奪われる。
*2 戦国時代末期から江戸時代初期にかけて海外に流出した日本人傭兵、日本で独自の改良を加えられた最盛期の火縄銃、西欧における宗教改革がらみの戦乱。