数ヶ月前(1・2年前?)、何らかの理由でローレンス・マニングというSF作家に興味を抱き、唯一の邦訳作品である『銀河は生きている』を「そのうち読むリスト」に入れた。そして先日、読める状況になったので(どういう理由でこの作家に注目したのかは今となっては忘れてしまったがリストに載っていたので)とりあえず読んでみたものである。
作品自体は(初期のSFマガジンにあっても)少々凡庸で古臭く思える。極大・極小宇宙ものとして、あまり新味が見いだせない。それ以外に、独特の味があるとか、キャラクターが良いとか、斬新なガジェットが出てくるとか、そういう美点も特にない。
それだけであればわざわざブログに感想を投稿することも無かったのだが、一つ特筆すべきことがあった。それは「赤へのずれ」という謎のタームが訳文中に頻出することである。1秒ほど戸惑った末に「赤方偏移」のことだと察しが付いたが、60年代初期だとこういうポンコツな翻訳が天下のSFマガジンでまかり通っていたことに驚いた(福島正実は何をやっていたのか)。しかも訳者名を見たら「林克巳」だったのでさらに驚いた(まさか同姓同名の別人…?)。
追記 Laurence Manningは主に1930年代にWonder Storiesで活動していた短編作家のようだ。The Living Galaxyも1934年の作品らしい。その範囲内で言えば水準以上の作品であろう。いやむしろ赤方偏移/青方偏移を扱ったSFとしてはかなり初期のものになるのではないか。……ひょっとして数ヶ月前の自分が本作に着目したのはそういうSF史的な意義を評価する書評か何かをどこかで読んだということか?
2022/11/27 追記の追記:どうやら本作を知ったのは『SF百科図鑑』(サンリオ)の「宇宙船と星間飛行」の章だった可能性が高いことを発見した。本作は、そこに明記されている中では、世代型宇宙船テーマのSFとしては最初のものである。「最初の○○」が三度の飯より好きな自分の性質からして、強く興味を惹かれて「そのうち読みたいリスト」に入れたとしてもおかしくない。しかし百科が述べているとおり、世代型宇宙船テーマSFとしては未完成と言おうか、そこがメインテーマではないので、その真の起源は百科が言うように
「600年の旅路(仮)」に求めるべきであろう。