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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

草上仁『キスギショウジ氏の生活と意見』感想

草上仁。私が認める数少ない――片手で数えられるほど少ない――日本SF作家の一人である(最初に読んだのは忘れもしない、ハヤカワ文庫JAの『ラッキー・カード』だった。あの新鮮な感動は今でも覚えている)。そして私が思うにSFの醍醐味はやはり短編にあり、草上仁の本領も短編にある。その草上仁の書籍未収録作品を中心とした短編集『キスギショウジ氏の生活と意見』が竹書房文庫から刊行されていたと気づいて読んでみた。


面白かった。これを機に少し語りたい。


やはり草上仁の短編SFは卓越していると再認識した。この人の秀逸さは、(黄金時代のスピリットを強く感じさせるという明々白々な長所は大前提として)時代や国を超えて鑑賞しうる高度な汎用性(透明性?超越性?一般性?どうも上手い表現が思い浮かばなくて申し訳ない。以下、便宜上「汎用性」と表現する)にある。


同時代の同じニッチの作品の大半が現代的な価値を失いクラシックとしての価値も生まずに忘れ去られているのに対し、本書に収録された作品は驚くほど新鮮さを保っている。後書きで本人が収録作品の一部に陳腐化した要素があることを語っているが、これは謙虚過ぎる見解だ。


そして多くの国産SF作家が安直なジャポニズムを看板にしているか、そうでないにしても拭い難く日本的であるのに対し草上仁の作品の多くは実に無国籍的な良さがある。そのような日本作家を私は他に知らない。


この汎用性は卓越した技量とセンスの賜物であろう。もっと評価されても良いと思うのだが……。いや、本書のような日下三蔵編の短編集が出るあたり、再評価の印なのだろうか?

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